27「人が集い、出会いが生まれる城下町の町屋」上村元三商店

熊本の城下町、「新町・古町」地区には、今も昔ながらの風情を残す「町屋」が点在しています。町屋の建物を活かした店も多く、古町地区にある「上村元三商店」もその一つ。店内には、居酒屋「源ZO-NE(げんぞーん)」と、キャンドル専門店「キャンドルハウス」、二つの店が同居しています。古町の案内人としても活動する店主の上村元三(げんぞう)さん、キャンドルクリエイターの上村敏子さん、ご夫妻に聞きました。

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金物店から「キャンドルハウス」と「企画屋」へ

釘やネジなどの建築小物、鍋や包丁などを扱う金物店だった「上村元三商店」。元三さんの祖父と父が昭和31年(1956年)に創業しました。店名は元三さんが生まれる前から決まっていたもので、元三さんの名は店名にちなんでつけられたそうです。

金物店の家業を継いだ元三さんでしたが、偶然の出会いが店を変えていきます。元三さんと結婚後、店で働くようになった敏子さんは、書店でキャンドルについて書かれた本を見つけます。「キャンドルって自分でつくれるんだ」と衝撃を受け、熊本で最初のキャンドルクリエーターを目指し、福岡へ通いキャンドルづくりを学びました。同時にキャンドルの仕入れ先を探し、平成元年(1989年)には金物店の一画でキャンドルの販売を始めました。

キャンドルの商材を求め、東京で行われる展示会に出かけた2人は、帰りの電車で、同じように展示会の袋を手にした男性と出会います。店で扱っていた道具を使って花見の席でバーベキューを振る舞った経験から、元三さんが「バーベキュー屋をやりたいと思っている」と話すと、「うちでやってるよ」と言われます。静岡で「企画屋」という名で、式典やイベント、バーベキューなどの社内レクリエーションを行っているというのです。元三さんは後日、静岡を訪ね、事業のノウハウを学びました。

平成2年(1990年)には「キャンドルハウス」をオープン。翌年、出張バーベキューを行う「企画屋」をスタート。その後、金物店を廃業し、平成14年(2002年)には居酒屋「源ZO-NE(げんぞーん)」を始めました。敏子さんは、ブライダルキャンドルの制作や、あかりの演出、テーブルコーディネート展やキャンドル教室などを通して、時代の変化に合わせたキャンドルを提案しています。

平成25年(2013年)にはすべての事業を統一する名称として「上村元三商店」の名を設定。「情報卸問屋」と称し、人力車の運行や着物を着る会、古町の町案内など、活動の幅を広げています。

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コミュニティーの力を発揮

古町で生まれ育った元三さんにとって、町は顔見知りの人ばかり。2016年の熊本地震では、この地域のコミュニティーの力が発揮されました。多くの人が避難していた五福小学校で、商売道具のバーベキューセットを使って、PTAや地域の人たちと協力し、炊き出しを行いました。

地域の飲食店の人たちと一緒に、バーベキュー用に仕入れていた肉を焼き、お米屋さんや八百屋さんから届いた米と野菜を使って、おにぎりや豚汁、卵焼きなどを作り、4日間、炊き出しを行いました。「いつも仕事でやっていることをしただけなのですが、喜んでいただけました。避難していた子どもたちもよく手伝ってくれました」と敏子さんは振り返ります。

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くまもと新町古町復興プロジェクト

城下町の風情が残るこの地域では、歴史ある建物の多くが被災しました。本震から2~3日が経ったころ、地元の仲間が集まり立ち上げたのが、「くまもと新町古町復興プロジェクト」です。

震災直後は、「おせっかいし隊」の名でメンバーを募集し、瓦礫の撤去から活動を始めました。寄せられた支援金でスコップやシートを購入し、耐久性の高いシルバーシートを配りました。

瓦礫の片づけに始まり、ワークショップの開催などを経て、30~40代のメンバーは、他県へ視察・研修にも行きました。物理的な支援の後には心のケアが求められると考え、2017年には「熊本新町古町復興音楽会」と題し、クラウドファンディングを活用し、二度にわたって音楽イベントを開催しました。

被災した町屋や古くからの建物のなかには、残念ながら解体を余儀なくされたものも多く、失われてしまった風景がいくつもあります。そのなかで、古い建材を新しい建物の一部に用いたり、芸術作品に取り入れたりすることで、歴史を記憶に留める試みも行われました。

町屋を活かしたまちづくり

今まで受け継がれてきたものを大切にしながら、改めて城下町や町屋の魅力を発信する動きも始まっています。100年を超える築年数を持つものも多い町屋ですが、手を入れなければ建物は老朽化していくため、商売や住居として使用していないと、維持が難しくなります。そこで、ゲストハウスの運営など、町屋を活かすアイデアも出ているそうです。

地震の被害を受けながらも再開した上村元三商店には、支援のために駆け付けた人々も訪れました。県外の自治体から派遣された人たちが、顔合わせや仕事の引継ぎの際に店を利用し、なかには後日、プライベートで訪ねてきてくれた人もいたそうです。

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昔ながらの町並みや、レトロな店の雰囲気は、観光客にも人気です。店で隣り合った人同士が会話し、仲良くなって帰っていくことも多いといいます。

「この店も地震で被害を受けました。そこで、ゲストハウスとしての利用も視野に、補修を計画しています。キャンドルをつくって、和ろうそくをともして、ご飯を食べて、町内散策をする。海外からの観光客も意識し、この町で1日楽しめるようにしたいと思います」

熊本の好きなところとして元三さんが書いてくれたのは、「昭和な風情と人情の我が古町」という言葉です。元三さんの店の住所は魚屋町三丁目。建設途中の東京タワーが登場する映画「ALWAYS 三丁目の夕日」を連想するといいます。

「私は東京タワーと同じ昭和33年生まれ。町の人同士の仲がよく、いい意味でおせっかい。ここは昭和のような町だと思っています」と元三さん。

感じたままに楽しいことを追い求め、続けてきたという「上村元三商店」には、地元の仲間はもちろん、国内外から訪れる人々が集い、さまざまな出会いが生まれています。

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◆イベントやキャンドル教室を開催

「企画屋」の出張バーベキューは、大人数にも対応。「源ZO-NE」では、不定期にイベントも開催。「キャンドルハウス」の手作りキャンドル教室は、随時受け付けています。詳しくは問い合わせを。

Facebookページ https://www.facebook.com/yamagen.kumamoto/

(2018年7月取材/文・写真 ゆうプランニング野口)

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