25「かつお節を使って、喜ばれる商品をつくりたい」松魚村平

熊本の城下町、古町の一角にある「松魚村平(しょうぎょむらへい)」はかつお節の専門店。店内に入ると、かつお節の豊かな香りが広がります。4代目に当たる嶋村誠次朗さんに聞きました。

IMG_8820_

130年以上の歴史を持つ、かつお節の専門店

「村平」は元は新町にあり、130年以上の歴史を誇ります。2代目に後を継ぐ人がおらず、サラリーマンだった嶋村さんの父が技術を学び、「村平」の名を受け継ぎました。古町で店を開き、「松魚村平」と名乗ります。松魚はカツオの別名で、「しょうぎょ」とも「かつお」とも読みます。かつお節の切り口が松の木に似ていることが由来ともいわれます。

村平では、日本を代表する生産地、鹿児島の枕崎からかつお節を仕入れています。現在は冷凍輸入されたカツオを原料とすることが多く、解凍したカツオを3枚におろし、背側と腹側に分けて切り、お腹側を雌節(めぶし)、背中側を雄節(おぶし)と呼びます。カツオのサイズが小さい場合は、背と腹を切り分けず、その形が亀の甲羅に見えることから「亀節」と呼ばれます。

左から、荒本、中枯れ、枯節
左から、荒本、中枯れ、本枯節

カツオを加熱し、いぶして乾燥させたものが「荒本(あらほん)」(荒本節)です。荒本に特殊なカビをつけ、乾燥させ、天日干しをすると、「中枯れ(ちゅうがれ)」(枯節)になり、さらにカビつけと乾燥を繰り返すことで、堅く引き締まった「本枯節(ほんがれぶし)」(枯本節)ができます。

荒本節は、外側は黒っぽく、中はきれいなピンク色。削ると、少ししっとりした状態で、香りや味わいが強く、そばやうどんのだしなどに用いられます。枯本節につけるカビには、水分を吸い上げ、脂肪分を分解する働きがあります。そのため、脂分で濁らず、澄んだだしがとれます。中枯れや本枯節は、上品で奥深い味わいになり、日本料理店や料亭などで使われます。

「香りを重視するなら荒本、うまみを重視するなら中枯れや本枯節がおすすめです。料理に合わせて使い分けるとよいですよ」と嶋村さんは話します。

かつお節の水分が多いとだしの濁りや雑味の原因になります。そこで、村平では、初代から取り引きが続く卸元に頼み、水分量の多い荒本でも、通常の商品よりも水分を飛ばしてもらっています。かつお節の状態によっては、店先で天日干しすることもあります。

時代に合わせた商品を開発

「村平」といえば、熊本では広く知られていましたが、若い世代には知らない人も増えています。そこで嶋村さんは、20~30代を意識した家庭向きの商品開発に取り組みました。

きな粉のように細かい粉かつお
きな粉のように細かい粉かつお

店では、かつお節を細かな粉状にし、量り売りしています。みそ汁をつくる時に、だしをとらなくても、みそを入れる前にスプーン1杯加えるだけで、風味が増します。

「最低限の手間で、おいしいみそ汁ができます。豚肉でたとえれば、粉かつおは、豚小間のような商品だと思っています。かつお節を、もっと気軽に取り入れてほしいと思います」と嶋村さん。

「かつお節は元々保存食品なので、削る前のかつお節の賞味期限は、無いに等しいと言えます。削った後も、冷蔵庫や冷凍庫で保存していただければ、風味が長持ちします」

IMG_8770_

続いて開発した商品が、ふりかけです。かつお節の持ち味を生かした無添加ふりかけと、ニンニク醤油のうまみが効いた辛口の2種類。熊本の食品会社に生産を委託し、1年がかりで開発しました。

最終の試作品が届いた直後に、熊本地震が起きました。地震後、店や機械は無事でしたが、商売ができるのか分からないような状況でした。それでも嶋村さんはいち早く店を再開します。本震の2日後には、シャッターを開け、明かりをともし、店を開け続けました。「お客さんが来るわけがないと分かっていたのですが、商売をしていかないといけないという思いと、早く元の生活に戻りたいという思いがありました」

地震前に届いたふりかけの試作品は、避難所になっていた近くの小学校に届けました。「それから1カ月ほどして、店を訪れたお客さんから、『これ、避難所にあったふりかけでしょう? めちゃくちゃおいしかったです』と言われました。商品の反応も気になっていたので、うれしかったですね」

IMG_8802_

最近は、だしをとる人も減ってきています。だからこそ、今の時代にあった商品が必要だと考えています。「無添加のふりかけが好評で、健康や安全に気を使っている方が多いことに気づきました。父たちが引き継いできたものに、プラスアルファすることが、生き残る術になると思っていましたが、結局はお客さまの喜ぶ顔を見たいから取り組んでいるのだと気づかされました」

次は、料理店でも使えるような本格的なだしパックの開発を考えています。「村平のかつお節を使ったからこそできるものを作りたいと思っています。安ければいい、うまければいい、ではなく、商品の本質を知って、買ってよかったとお客さまに喜んでいただけるものが一番です。考えていると、わくわくしてきます。そんな自分自身もわくわくするようなことを今後も続けていきたいです」

◆地域全体でつくるイベントを開催

城下町として栄えた古町には、地域の強い結びつきがあります。今は別の場所に住まいを構える嶋村さんですが、改めて古町の良さを感じたといいます。「地震の後、見知った顔を見つけ、自分のことのように無事を喜び合いました。あつかましいくらいに近い(笑)というか、それくらい深い付き合いの人間関係ができているのだと思います」

熊本の好きなところを尋ねると、「ほどよい田舎具合」という答え。「バスや電車は通っているし、都会と比べると家賃は安い。生活しやすく、自然にも近い、ほどよい田舎具合が魅力だと思います」と話してくれました。

IMG_8808_

古町では、毎年11月に「風流街浪漫(ふるまちろまん)フェスタ」が行われています。五福校区の商店主による「五福風流街商栄会」(ごふくふるまちしょうえいかい)では、毎年バザーを行います。嶋村さんはこの「バザー部門長」を務めています。地域住民と小学校が協力し、地域全体でつくりあげるイベントです。

松魚村平では、電話やFAXでの注文にも応じています。詳しくはホームページへ。

松魚村平 http://www.murahei.co.jp/
五福風流街商栄会 http://529furumachi.com/

(2017年6月取材/文・写真 ゆうプランニング野口)

It's only fair to share...Share on Facebook
Tweet about this on TwitterShare on Google+