24「ブドウの味わいを生かした理想のワインを目指して」熊本ワイン

日本のワインがまだ珍しかった平成11年(1999年)、「熊本ワイン」は熊本で初めてのワイナリーとして誕生しました。熊本の気候や風土に合わせたブドウ栽培と醸造に取り組み、評価の高いワインを造りつづけています。

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農家とともに一から始めたブドウ造り

熊本ワインでは、山鹿市菊鹿町でワイン専用品種のブドウを契約栽培しています。「菊鹿町が選ばれたのは、サルビアの花の発色が非常にきれいだったからだと聞いています。昼夜の寒暖の差が大きいだろうという見立てで栽培を始めましたが、どのようなブドウができるのか全く見えない状態での出発でした」と、創業当時から醸造を担当し、現在は代表取締役社長を務める幸山賢一さんは話します。

「今でこそ日本ワインの認知度が上がりましたが、当時は日本でワインを造っていること自体、あまり知られていませんでした。甘いワインが好まれていた時代に、ワインを文化として根付かせるには苦労があったと思います」

栽培を始めた当時の契約農家は、ブドウづくりに関しては初心者でしたが、ワイナリーと農家が協力し、雨対策や水分管理など一つずつ努力を重ねてきました。当初3軒だった契約農家が今では30軒にまで増えました。

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開花が終わり、結実したブドウ(6月撮影)

2008年には菊鹿町産のシャルドネというブドウ品種を使ったワインが国際的な賞を受賞し、注目を集めました。その後も国内外のコンクールで毎年のように入賞を続けています。「菊鹿」ワインシリーズの評価は高く、中でも畑の所在地の名をつけた「五郎丸」「小伏野」などの銘柄は、生産量も限られているため、なかなか手に入らない幻のワインになっています。そこでブドウの栽培面積を増やし、需要に応える努力をしています。

九州の他の県でもシャルドネのワインを造っているところが多いといいます。「シャルドネという品種の順応性の高さがうかがえます。九州のワイナリー全体で盛り上がっていければいいですね」と幸山さんは期待を込めます。

ラベルやボトルのデザインを一新した「菊鹿」

熊本の風土に根差したワイン

日照量が多く、気温が高い熊本では、果実味豊かなブドウがとれます。「大事にしているのは、ブドウ本来の味わいを最大限に生かせるような造りです」と語るのは、現在、醸造を担当する製造部課長の西村篤(あつし)さん。「テロワール(土壌、気候など土地の個性)を生かした、熊本らしいワインを目指しています」

熊本の気候を考慮して始まったのが、ブドウのダメージを防ぐため、涼しい夜の間に収穫する「ナイトハーベスト」です。近年、気温の低い夜に収穫すると香りの成分が出やすくなるという研究結果が発表され、理にかなっていることが証明されました。

ワインと相性のよい料理を合わせることを、フランス語で「結婚」を意味する「マリアージュ」と表現します。同じ産地のワインと食材を合わせるのもマリアージュの一つの方法です。「熊本はお米がおいしく、塩トマト、ナス、デコポンなど特産品がたくさんあります。熊本のワインに熊本の名物や郷土料理を合わせ、食材や料理が生まれた背景を思い浮かべながら、ワインの味わいを楽しんでいただければと思います」

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熊本城の復興を支援

昨年の熊本地震では、大きなタンクや樽が動くほどの衝撃で、店内や倉庫に積み上げていたワインや瓶が割れるなどの被害がありました。出荷ができない状態がしばらく続きましたが、幸い工場は増設工事中だったため、復旧はスピーディーに進んだといいます。

熊本城内の本丸御殿の中にある「昭君之間(しょうくんのま)」の写真をラベルに用いた「熊本城本丸御殿」というワインがあります。「地震の後は多くの方にご心配いただきました。熊本城にちなんだワインを造っていたので、少しでも何か手助けができればという思いから、売り上げの一部を寄付することにしました」。「熊本のために」と県内外から購入が相次ぎ、売り上げの10%を「熊本城災害復旧支援金」として寄付しています。

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自社農園を併設した新たなワイナリー

IMG_0309_2今年、通信販売限定で、巨峰・キャンベルアーリー・ナイアガラという3種類のブドウから造ったスパークリングワインが販売されました。西村さんの名前「篤(あつし)」にちなみ「スパークリングATSU(アツ)」と名づけられたワインはすぐに完売。通常、ワインの中に含まれる「澱(おり)」と呼ばれる濁った成分は取り除くのですが、うまみや香りの成分が閉じ込められているので、あえて澱を残してボトル詰めしました。今季は、シャルドネを使った本格的なスパークリングワインを製造する予定です。

熊本ワインでは、現在、菊鹿町に新しいワイナリーの建設を進んでいます。自社農園を併設し、ブドウの栽培から醸造まで一貫して行います。

「農業と醸造がワンセットでできるようになるので楽しみです。よいブドウができなければ、よいワインは造れません。これから理想のワインを目指して、本当のワイン造りが始まるのではないかと思っています」と西村さんは期待に胸を膨らませます。

理想のワインとはどんなものか尋ねると、「自分の色を出すというか、僕らしいものができればと思います。ブドウを栽培する場所、ワイナリー、造り手…、ワインに風土と背景が付いてくれば、よいワインになるのではないかと思っています」と語ってくれました。

新しいワイナリーが誕生するのは、2018年秋の予定。熊本ワインの新たな歴史が始まります。

◆いろいろなスタイルのワインを楽しんで

最後に熊本の好きなところを尋ねると、考えた末に「肥後もっこす」と書いた西村さん。無骨で頑固な熊本人気質を表す言葉です。「熊本の人は負けん気が強いですが、熊本のみんなが、熊本が一番、熊本が好きだ、と思っているところが素晴らしいと思います」

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左から、醸造担当の西村篤さん、社長の幸山賢一さん

あまりワインを飲んだことがない人には、自分が普段飲むものに近い味わいを持つワインを試してみることを、西村さんは勧めます。「ビールや焼酎が好きな方にはしっかりした辛口のワイン、カクテルがお好きな女性には甘口タイプがおすすめです。イベントやプレゼントには、色みのきれいなロゼワインが喜ばれます。甘口、辛口、ボディー感など、いろいろなスタイルがあるので、どういう場面でどういう方と飲むのかを教えていただければ、おすすめのワインを提案します」

食品工業団地「フードパル熊本」内にあるワイナリーにはショップが併設され、ワインやおつまみ、ジェラートなども販売されています。詳しくはホームページへ。オンラインショップもあります。

熊本ワイン http://www.kumamotowine.co.jp/

(2017年6月取材/文・写真 ゆうプランニング野口) ※畑とスパークリングワインの写真は熊本ワイン提供

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