21「心をこめて、おいしい豆腐をつくりつづける」たしろ屋

昭和23年に熊本市本荘で創業した「たしろ屋」の豆腐は、風味豊かで、やわらかな食感が特徴です。代表取締役の田代康道(やすみち)さんに聞きました。

濃厚な豆乳が味の決め手

豆腐の原料は大豆と水とにがりだけ。豆腐作りに欠かせない水ですが、熊本では質の高い地下水を用いることができます。水に漬けた大豆を搾る時、できるだけ水分を減らして濃い豆乳をつくるため、大豆の香りや味が引き立ち、豊かな風味が生まれます。豆乳をつくった後の工程は、ほぼ手作業で、一つ一つ丁寧に仕上げています。

田代さんは長年、東京でファッションとインテリアの仕事に携わってきましたが、父・一生(いっせい)さんからの電話を機に、家業を継ぐことを決意します。まず手がけたのは、パッケージのリニューアル。画家の井上文太さんによる文字が印象的な、すっきりとシンプルなデザインに変わりました(一部商品は他の書家作品を使用)。

2011年には、初めての直営店を博多阪急と鶴屋百貨店にオープン。「一度食べてもらいたい」という思いから、店頭では試食販売を行っています。

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本社工場を移転し、新たな一歩を

2016年の熊本地震では本社工場が被災し、製造を中断。物流もストップしたため、大量の商品を病院や避難所などに配りました。その後、4月下旬に工場を再稼働しました。

「商品が店頭に並ぶと、多くの人から喜んでいただき、『がんばってください』と励まされました。私たちの仕事はお客さまなしでは存在できません。人と人とのかけはしになる商品がなければ、成り立たなくなってしまいます。平凡に思えた日常が、地震の後にはありがたいものだと感じるようになりました」と田代さんは振り返ります。

地震が契機となり、今年2月に食品工業団地「フードパル熊本」内へ移転しました。豆腐づくりは、温度、湿度、水温などによって変わるデリケートな作業です。「移転した当初は、水の違いに苦労しました。同じ熊本で、ここまで水の質が違うとは思いませんでした」。にがりの配合なども微調整しながら、安定した品質を保つ努力をしています。

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オリーブオイルと塩をかけて

広がる豆腐の可能性

041_食材としても使える豆腐は、いろいろな可能性を秘めています。「新商品の開発も含め、まずは納得できるおいしい豆腐をつくりつづけたいと思っています」。その上で、惣菜やスイーツの開発なども視野に入れています。

「浜田醤油さんと豆腐用の醤油を開発しましたが、大豆製品の一つとして、納豆にも取り組んでみたいですね」。それぞれの分野のエキスパートとのコラボレーションや、熊本の食材を使った豆腐料理の店などの展開を思い描いています。

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ショウガたっぷりの「生姜醤油」をかけて

熊本へ帰郷した時、阿蘇の雄大な山並みや深い緑に包まれた光景など、大自然に感慨を覚えたという田代さん。熊本の好きなところとして、「朝焼けと夕焼けの美しさ」を挙げます。

「豆腐づくりは午前1時から始まります。作業の合い間に外へ出ると、工場の前にものすごく美しい朝焼けが広がっています。遠くに阿蘇の山々が見え、幻想的な風景です。家に戻ると、今度は夕焼けを見ることができます。朝焼けと夕焼けの美しさで浄化されるような、太陽のパワーを感じます」と話してくれました。

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朝焼け(イメージ)

◆「全国豆腐品評会」で入賞

2016年8月に福岡で行われた「第一回九州・沖縄地区豆腐品評会」で、たしろ屋の〈京-MIYAKO-〉が「寄せ・おぼろ・ざる豆腐」部門で「金賞」を受賞。「木綿豆腐部門」では、〈和-なごみ-〉が7位に入賞しました。

10月には、熊本で「第6回ニッポン豆腐屋サミット」と「第二回全国豆腐品評会」が開催されました。熊本地震で開催が危ぶまれたものの、全国から参加者が集まり、前回大会を上回る規模となりました。

品評会では、各地区予選会に参加した事業者298社・671点から選出された78社・107点による決勝戦が行われました。たしろ屋の〈京-MIYAKO-〉は、「寄せ/おぼろ豆腐の部」で8位になるとともに、「熊本県知事賞」を受賞しました。

〈京-MIYAKO-〉
汲み上げ豆腐〈京-MIYAKO-〉

たしろ屋では、麻の実やゆずの皮を加えた豆腐など、ひと味違う商品も製造しています。表面に薄く湯葉がはった「一生のゆばどうふ」は、水にさらさない特殊な製法でつくるため、大豆のうまみが凝縮され、濃厚でまろやか。口どけのよさも人気です。

商品は、直売店の「たしろ屋 熊本鶴屋」と「たしろ屋 博多阪急」、東京の「銀座熊本館」「ナチュラルローソン&フードクルック 神宮外苑西店」、熊本市内の「鶴屋フーディワン」や一部スーパーで販売されています。各地の催事に出展するほか、お取り寄せにも対応しています。詳しくは下記ホームページへ。

たしろ屋 http://www.tashiroyatofu.com/

(2017年5月取材/文・写真 ゆうプランニング野口)

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